「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 480

ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 480 引用ここから「

 F_{i}/F_{i-1}の拡大次数を n_{i}とおきます。

 n_{1}, …,  n_{s}の最小公倍数をnとして、1の原始n乗根ζを拡大列に加えます。

Q(ζ)= F_{0}(ζ)⊂ F_{1}(ζ)⊂…⊂ F_{s}(ζ)= L(ζ)

 すると、 F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ)の拡大では、 F_{i-1}(ζ)に1の原始 n_{i}乗根が含まれていますから、定理6.5より F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ)はべき根拡大になります。

 つまり、 F_{i}(ζ)は、 F_{i-1}(ζ)にx^ n_{i}- a_{i}=0の1つの解 n_{i} a_{i}を加えて、 F_{i}(ζ)= F_{i-1}( n_{i} a_{i}, ζ)と表されています。 

」引用ここまで

 

f(x)=0のガロア群が可解群であるという前提なので、 F_{i}/ F_{i-1}が巡回拡大なのは良いが、そこからただちに F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ)が巡回拡大といえるのか、感覚的にはそうなりそうだがそれほど明らかでもない。

 

例えば(巡回拡大ではない例だが)、Q(√2, √3)/Qはp339から議論したようにガロア拡大だが、1の原始2乗根である1/√2≡ζとすると、Q(√2, √3,ζ)/Q(ζ)=Q(√2, √3)/Q(√2)となり、ζを加えるという操作で拡大列がどのような影響を受けるか考える必要がある。

 

これは以下のように考えればよい。

(1) F_{i-1}∋ζの場合(当然ながら、 F_{i}∋ζである)

 F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ)= F_{i}/ F_{i-1}なので、 F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ)は巡回拡大である。

 

 

(2) F_{i-1}にζが含まれず、 F_{i}∋ζの場合

 F_{i-1} F_{i-1}(ζ) F_{i}= F_{i}(ζ)

であり、

 F_{i}/ F_{i-1}= F_{i}(ζ)/ F_{i-1}ガロア拡大なので、 F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ)もガロア拡大であり、Gal( F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ))は、Gal( F_{i}/ F_{i-1})の部分群である。巡回群の部分群は一般に巡回群なので、 F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ)は巡回拡大である。

 

なお、拡大次数は n_{i}の約数であり、 F_{i-1}(ζ)上の方程式x^ n_{i}- a_{i}=0の1つの解 n_{i} a_{i}を用いて、 F_{i}(ζ)= F_{i-1}( n_{i} a_{i}, ζ)とできる。

 

(2) F_{i-1}にも F_{i}にもζが含まれない場合

 F_{i} F_{i-1}上のm次既約多項式g(x)=0の解βを用いて、 F_{i}= F_{i-1}(β)と表されているとする。g(x)=0の解を β= β_{1}, … β_{m}とします。すると、Gal( F_{i}/ F_{i-1})={ σ_{1}, …, σ_{m}}で、 σ_{i}(β)= β_{i}で自己同型写像が作れます。

 

 F_{i-1} F_{i-1}(ζ)⊂ F_{i}(ζ)= F_{i-1}(ζ, β)

である。

 

g(x) F_{i-1}上では既約でしたが、 F_{i-1}(ζ)上では既約でない可能性があります。 F_{i-1}(ζ)上でのβの最小多項式をh(x)とすると、g(x)はh(x)で割り切れます。h(x)=0の解は、 β_{2}, … β_{m}のうちのいくつかと、βとであるということがわかります。

 

 F_{i-1}(ζ)を不変にする、 F_{i}(ζ)= F_{i-1}(ζ, β)に作用する同型写像を考えます。p390で考えたように、βの移り先を調べてみることにします。βの移り先はh(x)=0の解しかあり得ないことがわかります。そして、これらはすべて実現できます。

 

 F_{i}/ F_{i-1}ガロア拡大より、 β= β_{1}, … β_{m} F_{i}に含まれているので当然に、h(x)=0の解は F_{i}(ζ)に含まれています。よって、 F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ)はガロア拡大となります。Gal( F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ))は、{ σ_{1}, …, σ_{m}}のうちのいくつかであることから、巡回群の部分群より巡回群です。

 

よって、 F_{i}(ζ)/ F_{i-1}(ζ)は巡回拡大です。