「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 406
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 406 引用ここから「
定理5.36
Q上の方程式f(x)=0の最小分解体をL、そのガロア群をGとする。中間体Mと部分群Hがガロア対応しているとする。
また、これらを満たすとき、Gal(M/Q)~=G/H
」引用ここまで(~=は、=の真上に~をつけたもの)
この定理は、後で、
Q ⊂ M_1 ⊂ M_2 ⊂ Lが
G ⊃ H_1 ⊃ H_2 ⊃{e}
のようにがロア対応しているものとする。
M_2がM_1のガロア拡大体である⇔H_2がH_1の正規部分群である
このとき、Gal(M_2/M_1)~=H_1/H_2
である、というかたちで引用されますが、それほど自明とは思えませんでした。
定理5.36と同様に証明できると思います。
定理5.35より、任意のσ∈Gに対し、σ H_2 σ^{-1}と、σ(M_2)がガロア対応します。
⇒
M_2がM_1のガロア拡大体であるとき、M_1を不変にするM_2に作用する同型写像が全て自己同型写像になっている。
M_1を不変にするM_2に作用する同型写像は、H_1=Gal(L/M_1)で全てであり(Gに作用するときには異なっていたものが、M_2に作用するときには縮退してしまうものもあるが)、σ∈H_1について、σ(M_2)=M_2となる。
M_2とH_2がガロア対応し、σ(M_2)がσ H_2 σ^{-1}とガロア対応することから、
H_2 = σ H_2 σ^{-1}
これより、H_2はH_1の正規部分群になっている。
⇐
H_2がH_1の正規部分群であるとき、σ∈H_1について、σ H_2 σ^{-1} = H_2である。
M_2とH_2がガロア対応し、σ(M_2)がσ H_2 σ^{-1}とガロア対応することから、M_2=σ(M_2)となる。
H_1=Gal(L/M_1)でH_1はM_1の元を不変にするM_2に作用する同型写像を網羅しており、M_2=σ(M_2)よりM_2の自己同型写像になっている。よって、M_2/M_1はガロア拡大である。
Gal(M_2/M_1)~=H_1/H_2について
H_1は、もともとはLに作用する自己同型写像でした。作用するfieldをM_2に限定すると作用が同じになってしまうものが出てきます(p. 359を読むとわかります)。H_1の元でM_2に作用するときに同じになってしまうもの同士でグルーピングします。各グループから代表を1つとってきて、それらをσ_1, …, σ_sとします。
写像ρとして、
Gal(M_2/M_1)→H_1/H_2
σ_i → σ_i H_2
を考えると、これは同型写像になっています。
∵ρ(σ_i )* ρ(σ_j)=σ_i H_2 σ_j H_2 = σ_i σ_j H_2 = ρ(σ_i * σ_j)
ここで、H_1/H_2 = {σ_1 H_2, …, σ_s H_2}と書けるのだろうかという疑問が沸くと思います。σ_i H_2とσ_j H_2が互いに異なることは、M_2に作用させたとき、σ_i H_2 (M_2) = σ_i (M_2)となることからわかります。
また、H_1/H_2 に実は、σ_1 H_2, …, σ_s H_2以外の元が存在しないか気になるかもしれません。仮に存在したとしてσ H_2とすると、これをM_2に作用させると、σ(M_2)となりますが、σ_1, …, σ_sでM_2に作用する自己同型写像を網羅したことに反します。
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 387
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 387 引用ここから「
Lの正規性により、Lの元βを解に含むM上のg(x)=0の解
…, はすべてLに含まれます。
」引用ここまで
この記載は若干説明が足りていないと思われる。なぜなら正規性の定義として、
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 383 引用ここから「
一般にQを含む体Kから任意の元をとってきてその上の最小多項式f(x)を考えます。このときのf(x)のすべての解がKの元であるとき、KはQ上で正規性を持つといいます。
」引用ここまで
とあり、また、定理5.30でも「Q上での」最小多項式を考えているからである。
p. 387 の記載は次のように考えればよい。βを解にもつ「Q上の」最小多項式をf(x)とすると、f(x)はM上では既約ではないかもしれない。f(x)はM上での最小多項式g(x)と共通解βをもつので、f(x)はg(x)で割り切れる。よって、g(x)=0の解は、f(x)=0の解に含まれる。f(x)=0の解は、Lの正規性よりLに含まれる。これより、g(x)=0の解は、Lに含まれる。
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 337
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 337 引用ここから「
[Q(α):Q(√2)]は、いくつになるのでしょうか。
」引用ここまで
本全体でQで示した定理をQを含むQよりも大きい体(例えば、Q(√2))でも成り立つとして使うことが多々ありますが、Qを含むQよりも大きい体でもQと同様に定理が成り立つことを具体例で示すといったことが足りていないように感じました。
上記の引用箇所は、定理3.6、定理5.2、定理5.3が、Qを含むQよりも大きい体でも同様に示せることがわかっていないと躓きます。
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 288, 305
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p.288 引用ここから「
αのQ上の最小多項式f(x)を求め、その次数がnであれば、Q(α)に含まれる数はαのn-1次以下の多項式であらわされるすべての数です。このときQ(α)をn次拡大体と呼び、拡大体の次数nを[Q(α):Q]で表します。
」引用ここまで
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 305 引用ここから「
前節で、Q(α)の次元を定義しました。そもそも次元とはどういうことかをここで補足しておきたいと思います。
」引用ここまで
後の方まで読んでいくとわかりますが、拡大次数の定義が初めよくわかりませんでした。Qの拡大体であるQ(α)について、拡大次数とは、Q(α)をQ上の線形空間として見たときの次元のことですが、このことは、本の中にある複数個所の離れた記載を読まないと理解できないと思いました。
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 155
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 155 引用ここから「
置換を作るには、あみだくじの下段に書かれた数字をその真上にある数字に"置き換える"と解釈します。
」引用ここまで
1が左から2番目のところにきて、2が左から3番目のところにきて、3が左から1番目のところにくるようなあみだくじを
と表す、のように言った方がわかりやすいと思われる。p. 157-158を見ると、この考え方と同じ考え方をしている。
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 94
「ガロア理論の頂を踏む(石井俊全著)」p. 94
引用ここから「
h を (Z/pZ)* の原始根とします。このとき、h の mod p^n での位数を m とします。
h^m ≡ 1 (mod p^n) より、h^m ≡ 1 (mod p) で、h の mod p での位数が p - 1ですから、m は p - 1 で割り切れます。m = s(p - 1) とします。すると、h^s の mod p^n での位数は p - 1 です。ここで g = h^s とおきます。
1, g, g^2, …, g^(p-2)
は、h で表すと指数がすべて m = s(p -1) 以下ですから、mod p^n でみてすべて異なります。もちろん、mod p で見たときもすべて異なります。
」引用ここまで
1, g, g^2, …, g^(p-2)がmod p で見たときもすべて異なる点については以下のように考えればよい。
{1, h^1, h^2, ・・・, h^(m-1)}が
位数がであるの部分群なので、
ラグランジュの定理より、
m(=s(p-1))は、の約数。
よって、s = p^iとかける(iは0以上n-1以下の整数)
hは(Z/pZ)*の原始根なので
h^(p-1)≡1 (mod p)
例えば、i=3だとすると(一般の場合も同様)
h^s= h^{p^3} = h^{(p-1+1)*p*p}= h^{ (p-1)*p*p +p*p}= h^{ (p-1)*p*p) }* h^{p*p}= #
ここで、
h^{ (p-1)*p*p) }= (h^(p-1))^(p*p)≡1^(p*p)≡ 1 (mod p)
同じことをh^(p*p)についても繰り返せば、
#≡h^p≡h (mod p)
1, h^s, h^2s, ・・・, h^(p-2)sがmod pで見ると、
1, h, h^2,・・・, h^(p-2)である。
hが原子根なので、
1, h^s, h^2s, ・・・, h^(p-2)sがmod pで見たときにすべて異なる。